旅立ち331
夜空に輝く光は瞬いて、
「あそこが出口なのか・・・」
自分の事を呼んでくれている。
あそこに行けば、ここから出られる・・・のだが、
「でも、これじゃあ・・・・・・」
人影のままで、あそこに行っても戻れない。
(戻れない?)
何が、何に戻れないのか・・・どうして、名前を思い出そうとしているのか?
正体を取り戻そうとしていた、その訳は?
人影は、窓の外に見える夜空ではなく、窓の中に写る自分自身の姿を見つめて、
(・・・そうだ、僕は死んだんだ)
輪郭しかない姿に、少しだけ思い出した。
化け物と争い、命を懸けて全ての力を吸収して爆発させた・・・神話に出てくる、神にすら匹敵する妖を殺すほどの一撃を放ち、自分の精神を焼いて・・・・・・
辛うじて肉体に残った僅かな精神も灰となり。
灰となった精神が、時の流れに沿って消えていく中で、何度も殺される命を感じ、自分が消え逝く前に残された時間で、魂達を救ってあげて・・・・・・
「みんなが、僕の精神が消えてしまわないように・・・命をくれたんだ」
繰り返される呪いから解放された命達は、還れない自分達よりも、まだ帰る事が出来る人影を助けようと、命を捧げてくれた。




