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旅立ち327
ベッドに腰掛けながら、窓の方を振り替える姿は物静かで、見返り美人のような気品さを見ているようであった。
その美しさは、子供を見守る清らかな心を持つ者が醸し出す雰囲気と、
(そっか・・・この人を見付けられなかったのは、亡くなった人だからか)
亡くなってもなお、子供を思う気持ちはあるのに声を掛けるだけで、触れてあげられない儚さが、入り交じっているからであろうか。
老婆は、子供が牢獄から無事に抜け出せたのを見届けてから、立ち上がる。
立ち上がったということは、願いを果たしたということ。
このまま出て行かれていけないと「待って!!」っと声を掛けようとしたが、老婆は立ち上がって、その場からいなくなってしまうのではなく、人影の自分の方に寄って来てくれる。
(なんで?)
記憶の中の住人に影響を与える、何かを始末した訳でもないのに、老婆は自分の前に来て、首元を優しくさすってくれると、
「首輪が・・・」
この世界に留めるために、首を締め上げていた真綿の首輪が、絹糸のように柔らかい手触りになったかと思うと、いとも簡単にほどける。




