旅立ち326
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(あの子は救われたのか)
首輪が消えてなくなった子供は、ベッドから起き上がると、枕下の隠していた経文を手にとって部屋から出て行く。
救われることのない、牢獄にいた子供は、これから運命を走り出すのを知っている・・・それが大切な人を失うことになるとしても・・・・・・
「何とかしなきゃ・・・・・・」
あの子は、もう助けなくても大丈夫、もう、この牢獄から出ていったのだから。
次は自分の番、何とかこの首輪を外して、部屋の中を探索をしたい。
何かの記憶を辿れるかもしれないのだが、指先に力を込めて首輪を触るが、切れる気配はない。
多分だが、これも記憶の鍵の一種・・・だとしたら、鍵を見付けないといけないはず。
自分の側にあるものと言えば机だけ、一つ一つの引き戸を開けてみるが、何もない。
「牢獄にある訳がないか・・・」
鍵じゃなくても良い、何かしらのヒントがあればと思ったが、その思いが通じることはなかった。
何も入っていない引き戸に落胆しながら、このまま消えていくことに覚悟を決め、せめて、記憶の中の窓から見える夜空を最期の、思い出にしようとした時だった。
「誰・・・?」
先程まで子供だけが横たわっていたベッドに、一人の老婆が腰掛けていた。




