旅立ち324
ーーーーーーーー
「うっ・・・‼」
強く脈打ち鼓動は、周囲のもの全てを拒否する・・・者も、モノも、物も拒否する。
鼓動の振動に、その身を砕かれるではないかと、翼を閉じて身を固めて、骨の芯から歯茎から痺れる振動に耐える。
脈を打つ繭に、敵も味方も存在しない。
繭を、自分の事を産み出してくれた母だと慕い、守ろうとするが、近寄る赤い鳥を害獣として、鼓動で破裂させる。
繭を偽りの母として、真なる母が中にいると繭を溶かそうとしても、近寄る翡翠の蝶を害虫として鼓動で押し潰す。
繭の周囲に漂っていた赤い霧すらも、近寄るなと吐き出される。
赤い繭は幾つものの、へその緒を出来損ないの人魚の死骸に伸ばし、自分が成長する為に栄養を飲み、その栄養を確保するために、自分の生命力で出来損ないの延命させてる。
目の前の存在は、母胎を喰い千切り、この世に生まれてくる事だけを望んでいる。
「あっ・・・」
リーフは死を直感した。
鼓動が早まり、鼓動が強まり・・・・・・それが生誕への合図だと分かるのに、なんの疑念の余地もなかった。
ただただ、繭の中の力が高まっていくだけなのに、赤い鳥も、翡翠の蝶も、赤い霧も溶かされていき、繭に繋がっていたへその緒も一本一本外れていく。




