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旅立ち320
あの目・・・家族を見る目ではなく、よりによって、なんで自分の所にこんな物が生まれてきたのだと蔑む目。
あの汚ならしい目を思い出すだけで、目が熱くなって、目が焼かれるような苦しみを思い出し。
なんとか出来ないかと・・・救おうとしての意味ではなく、なんとか周囲の人達に対面を保てるように出来ないかと、夜な夜な聞こえてくる陰口・・・
人の悪口を言うことで、憂さ晴らしをする臭い口の臭いで
、喉が焼かれるような吐き気を思い出す。
病人を詰め込む牢獄のキーが、次の辛かった思い出を開くキーになり、
「ここを・・・離れないと・・・・・・」
すぐにでも、ここから離れなければ、精神だけの人影は霧散してしまう。
やはり、無策でここに来るのは間違っていた。
次々と開け放たれていく、辛い記憶のドアに耐えられず、
この記憶の世界から出て、どこかで、名前を思い出すためのキーを見付けてからだと考え。
椅子から立ち上がって、この部屋から出ていこうとしたが、
「いつ‼」
首に鋭い痛みが走って、立ち上がるのを許さなかった。




