旅立ち312
それは僕の記憶に無い思い出。
怒った兵士達は雄叫びを上げ、僕達を無視して走り出す。
人影を掻き消そうと、一体の兵士が拳を振り上げるが、人影は後ろに跳んで避ける。
人影を霧散に散らせようと、鉄騎兵が拳を突き出すと、人影は腕を使って、身をかわしながら防御する。
拳を避けては防御して、防御しては避けて・・・・・・僕達の為に戦ってくれている人影は、兵士の数の多さに、反撃する事が出来ていなかった。
必死に避けて、防御をしてを繰り返し。
それを何度か繰り返した所で、何とか一人の兵士の隙を見付けたのか、拳を振った瞬間に合わせて、しゃがみこんで足払いをし、転ばすことに成功したが、次の瞬間には他の兵士に腹を蹴っ飛ばされて宙に浮く。
兵士達が腕をあげる、空に浮いた人影が、自分達の手元に落ちてくるのを待って。
まるで、放り投げられた餌を、口にくわえようとするワニのように、人影が落ちてくるの待ち、人影が手に触れた瞬間に我先に、人影の四肢を、胴体を、頭を奪い合うだろう。
凶暴な兵士達が、人影を待っている。
このまま落ちてはいけない、このまま落ちては消えてしまうという局面で、人影から羽が生えてくる。




