旅立ち311
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そこなら、あの怖い鉄の兵士も見付けられない。
そこに隠れよう、そこに隠れれば鬼に見付からない・・・・・・それを教えてあげようとした時だった
『グォォォォ‼‼』
まるで、獣が叫んだかのような悲鳴が耳に入ってきた。
こんな所に獣?
そう思って、顔を上げると、鋼鉄の鎧を着ていた兵士と、綺麗な緑色と汚い赤色が混ざった人影が戦っていた。
鋼鉄の兵士が振り子のように拳を左右に振ったが、人影はしゃがんで身を低くすると横に回り込んで、横腹に拳を叩き付け、
『オウゥオ‼』
鋼鉄の兵士が苦しみで頭を下げた所に、渾身のストレート
を顔面に打ち込むと、
『グォォォォ・・・・・・』
鋼鉄の兵士は、その場に身を倒れて、ボロボロと積み上げられた砂の城が崩れるように消えた。
その余韻を味わうように、人影は静かにその場に立ち、瞳がある訳ではないが、残りの兵士達を睨んでいる。
人影に口なんて無いのは分かっているけど、人影は兵士達に向かって「ここから失せろ」っと怒っている。
この人影の人は、僕達を守ろうとしてくれている。
僕達が、残虐に殺されるのを許そうとしない。
その時、気付いたこの人影の人は、母と父がいつもお話ししてくれる・・・・・・
『『グゥアガァウウウアァグア‼‼』』
僕がその名を呼ぶ前に、怒り狂った兵士達が、人影を襲いにいく。




