旅立ち302
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(あぁ・・・殺されるんだな・・・・・・)
一人のオークが大地に横たわりながら、自分の視界一杯に広がる鉄騎兵を見てながら、
(帰りたかったな・・・・・・)
悪態をつくこと無く、一瞬鼻を突く嫌な臭いと、頭の先に強い衝撃と弾ける感覚を感じると、そのまま終わった。
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(ママ・・・ママ・・・・・・)
そこには、沢山の女性と子供が広場に集められている。
女性達の顔は顔面蒼白で、あまりにも血の気の無い表情は、まるで出来の良い人形のよう。
子供達を守ろうとしているのか、各々が自分の子供を抱き抱えている。
そして、それは自分も例外ではなく、母が自分を抱き締めて怖いモノから遠ざけようと、隠そうとしてくれている。
母の胸に抱き寄せられて、その温もりは安心感を与えるものであるはずであったが、母の胸の先に見える、父よりも大きい体を持ち、その体に鋼鐵の鎧を着込んでいる兵士を見ると、体の芯から冷えていくような不安に襲われる。
(ママ・・・ママ・・・・・・)
抱き寄せられている温もりよりも冷たい不安に、堪らずに母を呼ぶ声を上げると(大丈夫・・・大丈夫だからと・・・・・・)母も、寒さに震えながらも、自分のことをあやしてくれるのであった。




