旅立ち299
空で逃げ惑う赤い鳥を追って、翡翠の蝶が舞う。
一羽の鳥を始末しては、次の赤い鳥を狙って飛翔する翡翠の蝶。
狩るモノと狩られるモノ、制空権は完全に・・・・・・
『びぎゃ!!』
『ぎゃぁ‼ぎゃぎゃあ‼』
翡翠の蝶が奪った訳ではなかった。
一対一なら確実に、翡翠の蝶の方に軍配が上がるが、何羽もの赤い鳥に抱き付かれては、翡翠の蝶といえど身動きできずに、ミツバチがスズメバチを殺す時に行う蜂球のように包まれて、そのまま無にされてしまう。
リーフ達の上で行われる、制空権の奪い合い。
殺しては殺され、奪っては奪われて、赤い鳥と翡翠の蝶の空中戦は目を見張る物があるが、それよりも目を見張ったのは、翡翠の蝶が生まれてくる場所。
翡翠の蝶は、無から生まれるのではない、霊能者である礼人に感化された時に生まれる特殊な魂。
逆を言えば、礼人に関与しなければ絶対に生まれることの無い存在。
生まれてくるには礼人の存在が必要不可欠で・・・・・・その必要不可欠な存在が今何処にいるのかというと、
「まだ・・・生きてるの?」
赤い霧の中。
ぐったりとして、指先一本動かさない姿には全てを出し切ったと、終わりを告げていたのに、赤い霧の中から翡翠の蝶達が飛び出してくる。




