夢の中49
二月は鋭い目付きで鋼鉄の巨人を睨む。
七転八倒に暴れ回る鋼鉄の巨人を、確実に潰すには胴体を狙いたい。
手足を吹き飛ばして身動きを取るのに難儀させても良いが、胴体を吹き飛ばせば頭に手足しか残らず、手も足もあるのに手も足も出ない状況に持ち込める。
冷静に…まだ礼人の霊力と血を媒介しても、命に別状は無いはず。
ここで仕留め損なえば礼人を犠牲にしなければ次は無い。
確実に仕留めないと……
二月は落ち着いて、指に絡む勝機という糸を手繰り寄せ、
「逝けっ!!」
『ヒュン!!』
蝶は光の粉となって空に舞った。
「ぐっ…ぉ……」
一瞬で終わった。
鋼鉄の巨人に集中し、暴れる手足を搔い潜って胴体へと向かおうと、一瞬だけ間を置いた瞬間だった。
「二月様!?」
蝶が、突如飛来した黒い矢に射抜かれると光の粉となって拡散し、その後から矢継ぎ早に黒い矢が飛んで、二月の体を突き刺したのだ。
その突如として現れた黒い矢に、目を白黒させながら飛んで来たであろう方向を見ると、
「わが」…ぁかぉうあ」
口をあわあわと動かしながら、光の矢を射る時の構えをしているアニーがいた。
自分の体に突き刺さった穢れた矢を二月は触る。
本当に突き刺さってしまったのか……強度だけではない、霊力に対しても対策をなされているこの服がいとも簡単に射抜かれたのかと……
「アニィィィィィィッィィィィィィィィ!!!!!!!!!」
仲間の怒号で気付く、
(あぁ…やってしもうたのぉ……)
どこかでアニーを信じ過ぎていた。
それは悪い意味ではない、悪いのは二月だ。
アニーが絶叫していたのは分かっていた。
何らかの精神的な攻撃を受けているというのは予想出来たが……アニーなら「随分と面白い事をしてくれましたねぇ!!!!」そう言って立ち直ると根拠も無く思っていた。




