旅立ち289
脅威にならない赤い手の平は無視して、地上の事はみんなに任せて、どうやってこの出来損ないの人魚を始末するか思考を巡らせ、この戦いに終止符を打つ為の一手を導き出そうとしていたが、
「ぐわぁ!!」
「なんだこれは!?」
地上から、自分の予想では決してありえないはずの、みんなの叫び声が聞こえて来た。
「なに!?」
みんなの叫び声に、答えを導き出そうとしていた思考は止まって、地上の方を振り返ると、
「燃える!?皮膚が燃える!?」
「落ち着け!!取り払ってやる!!」
赤い手に掴まれたオークが熱いと叫び、それを魂が籠った武具を持ったオーク達が必死に引き剝がしに掛かっている。
「どうして……?」
自分が触られた時は衝撃はあったが、決して熱いとも思わなかったし、大したことは無かったのに、
「くそっ!!この程度!!」
「くじけるな!!」
苦し紛れで放たれたはずの赤い手の平に、みんなが苦戦しを強いられている。
なぜ、エルフよりも屈強な肉体を持つオークが、叫び声を上げているのか?
それが分からず、自分の皮膚に付いている赤いモノをもう一度触り、手に付いた赤いモノをまじまじと見つめていると、手に付いた赤い液体は、グニャグニャとイソギンチャクのように触手になって、意識を持つかのように揺らめくのを見て、
「あっ…あぁっ!?」
小さな悲鳴と共に、これがただの液体では無く、アフレクションネクロマンサー様が言っていた怨霊だというのを思い出すと、
「みんな!!」
みんなを助ける為に地上へと、翼を羽ばたかさせていた。




