旅立ち288
赤い霧の中から飛び出た赤い手は、実を結ぶことが出来るまで育った果実が落とされるように、真っ直ぐに、一直線に落下して来る。
赤い霧の中から、実って落ちて来る手の平の果実。
真っ直ぐに、一直線に落ちてくる赤い果実に、リーフは身構えるが、赤い果実はリーフにぶつかる事無く、横を通り過ぎていく。
「小賢しいマネをして」
自分の事を避けて落ちていく果実……その目的は落ちていく場所に答えがあり、深く考える事は無い。
自分の下にいるのはオークのみんな。
自分に敵わないから、地上にいるみんなの事を狙ったのだろうが、
「無駄よ。私に敵わないのに、みんなに敵う訳ないじゃない」
オークの肉体は、エルフの自分とは違う。
オークの肉体は、リザードマンの焼き尽くす炎すら、しばしの間耐えてみせる鋼鉄の肉体。
リザードマンの吐き出す炎を浴びたら、皮膚が焼かれてただれるエルフの皮膚ですら何とも無いのに、みんなに対してどうこう出来るはずがない。
少しでも自分の冷静さを欠かせて、少しのミスでも良いから、過ちを起こさせたいのだろうが、赤い手の平が脅威にならないと分かっていて、欠く冷静さは無い。




