旅立ち277
それはまるで巨大な壁。
城の城壁のように一面に広がる壁に、そのまま向えばぶつかった衝撃で、自分の方が壊れてしまいそうで……現に最初に立ち向かった時は、そう思ったからこそ避けたが、
「これで終わりだぁ!!」
今度は違う。
空へと上がった、赤き翡翠の閃光は避けることなく、出来損ないの人魚の顎に狙いを定め、
『ブジュゥゥッゥウ!!!!』
まるで、水の中に熱した鉄を落としたかのような、水を焼くような音が響き、
『ひゅうぅるひゅうぅる!!!!!!』
悲鳴を上げる出来損ないの人魚に耳を貸す事無く、顎に突き立てた翡翠の剣から柔らかくも、手応えのある感触を手に覚えると、
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『グチュ!!グチュ!!グチュ!!グチュ!!』
『ひゅうぅる!!ひゅうぅる!!ひゅうぅる!!ひゅうぅる!!』
肉に喰らい付いた大鷲のように、翡翠の剣が鋭いクチバシになって縦横無尽に暴れる。
『ひゅひゅっひゅぅうひゅっ!!!!!!』
自分の体に入り込もうとする大鷲に慌てて取り払おうと、ボロボロになった右の手を顎の方に伸ばすが、
『バチバチバチバチ!!!!』
翡翠の羽から放たれる赤い雷撃が礼人に触れる事を許さず、出来損ないの人魚の手は焼かれ痺れて触ることが出来ず、左の手の方で巣にいる雛鳥を襲えば、自分の喉元に喰らい付く大鷲も離れると、手を伸ばすが、
「私が相手になります!!」
巣にはもう一人の親鳥が、睨みを利かせ、
「来やがれ!!我々は命の限り戦ってやる!!」
巣の中では親鳥に守られるのではなく、命を掛けて自分達の身を自分達で守る覚悟を決めた雛達がいる。




