旅立ち274
英雄として、みんなに生きて欲しいという願う優しさ、英雄として、敵を討つ為に仲間を犠牲にする覚悟を……
「行かれるんですね……アフレクションネクロマンサー様」
清らかな翡翠の光と、禍々しい赤黒い雷撃を身に纏う姿に、アフレクションネクロマンサー様として立ち向かう覚悟を決めた事を理解して、今一度、リーフは「あなた」と呼んだ彼をアフレクションネクロマンサー様と呼んでくれる。
「うん」
リーフがもう一度、自分をアフレクションネクロマンサー様と呼んでくれた事には何も言わずに頷いてから、
「あの出来損ないの妖怪を倒せるかもしれません」
「はい」
あの出来損ないの人魚は、最初はニタニタと笑みを深めるだけで、人を襲う事だけに喜びを感じる所から、程度の低い怨霊をかき集めた集合体かと思っていたが、自分にとって不利な状況になった途端に、つまらなさそうに表情を変えた。
それは複雑な感情があるという証拠であり、あの出来損ないの人魚には大勢いる怨霊を統一して、一つの感情にしている何かがある可能性が高い事を示している。
「あの出来損ないの妖怪を形成している、何かを破壊出来れば意志がバラバラになって、あの姿を維持出来なくなると思われます」
「それを一人で出来るんですか?」
「……あれだけの怨霊を溜め込んだモノに、一人では無理ですね」
「でしたら」
リーフも空に浮かぶ、出来損ないの人魚を睨むと共に行く覚悟を決める。
心の優しい少年に、残酷な決断をさせてアフレクションネクロマンサー様にさせた責任が自分にはある。




