旅立ち273
穢れたマナが体中を巡る。
いつもなら、こんな人体に悪影響を与える穢れは浄化して、清らかなマナを体に巡らせるのだが、
「はあぁぁぁあぁあぁぁ!!!!!!」
礼人は、迷う事無く体内に次々と穢れごとマナを吸収して力に変えていくと、
「ぐぅぅぅ……!!!!」
苦しそうに呻き声を上げ、歯を食いしばる。
肉体も精神にも赤いモノが入り込んで来て、体の中を細い糸が駆け抜けるような気持ち悪さを我慢してまで味わうのは、清らかなマナだけを吸収するために、無駄に霊力を消費しないため……ではない。
穢れたモノすらも、自分の力にする為。
穢れをそのまま吸収すれば、体内も精神も赤いモノに穢され、侵される事になるが、
(それでも力が必要なんだ!!!!)
赤いモノだってエネルギー体なのだ。
精神を奪って、生きた肉体を奪えば、再びこの世に生を得られる……もう一度世界に還りたいと、もう一度、世界を感じたいと暴走する赤いモノの思念を無理矢理に抑え付けて、赤いモノの願いを無理矢理に溶かして力にしていく。
礼人の翡翠の羽が次第に赤みを帯びて、ドス黒い電撃が翡翠の光に混ざって弾ける。
『バチンッ!!バチンッ!!』っと地面を殴るかのような音が翡翠の羽から鳴り響き、それと同じように翡翠の剣にもドス黒い電撃が獲物を探すように迸る。
月並みな言い方だが、それは今現在出来る礼人の最強の姿。
霊力もマナも魂も穢れたモノすらも取り込んだその姿は、全てを受け入れる覚悟を決めた証。




