旅立ち269
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「それは……」
それは、礼人も予想していなかった。
万が一に備えて、リーフの大剣にも魂を宿らせておいたが、それは宿らせてあっただけ。
自分と同じように、融合が出来る何かをしていた訳でも無く、本当に万が一に備えてであったのだが、それを上手く融合している……
(一体どうやって?)
彼女には霊能者としての素質は感じられなかった。
魂が融合に協力してくれたとしても、それだけの器を持っていない彼女が……
「私は最期まで戦います……あなたはどうするんですか?」
リーフは、礼人をアフレクションネクロマンサー様と呼ぶのではなく「あなた」と呼んだ。
「えっ……」
ずっと、自分の事をアフレクションネクロマンサー様と呼んでくれてたリーフが、ここで「あなた」と呼んで来た事に、礼人は狼狽を隠す事が出来ずに目が震える。
リーフに「あなた」と呼ばれたのは、彼女の信頼を裏切り、彼女から役立たずと判断されてしまったからと……
(どこまでも行っても…異世界に来たとしても……変われなかったのか……)
幽霊の、妖怪退治のエキスパートでありながら、出来損ないの化け物に翻弄される自分が情けなくて……自分自身を卑下して笑いそうになった時、
「……なんで、あなたは一人で背負おうとするんですか」
「一人で背負う……?」
リーフが、礼人を問う。
静かに…けれど、しっかりと相手の心に聴こえるように……




