旅立ち268
「お願い…力を貸して……」
それは、自然とこぼれた言葉。
それは、既に亡くなったお母さんに願った想い。
護って欲しいという願いではなく、護る為の力が欲しいという願い。
ずっと昔に亡くなってしまった母に、今のリーフの願いが届く可能性はとても考えられなかったが、アソリティの剣を強く握り、小さく呟いた言葉が祈りとなると、
『サァァァァァ……』
少し赤みを帯びているが、リーフの背中から鳥のような小さな翼が生える。
「姫!!」
「な…な……!!」
突如として生えた翼に、周りにいたエルフ達は驚きを隠せずに声を上げたが、リーフはその事を気に留めずに、
「……力を貸してくれるんだね」
ずっと昔に亡くなってしまった母に祈った願いが、アソリティの剣に宿っていた魂に想いが伝わって、共鳴してくれる。
「はぁぁぁぁ!!!!」
みんなの驚きをよそに、リーフは声を上げて翼を羽ばたかせると、
『バチバチバチバチバチバチ!!!!!!!!!!!!』
マナと魂が癒合した力が、放電しながら唸り声を上げる。
「今…行きます……」
「姫!!」
周りの自分を呼ぶ声。
それが自分を制止するものだったのかは分かったが、それでも大地を跳び上がって、翼を強く羽ばたかせて、
『バァアァァチンッッ!!!!』
一気に加速して、アフレクションネクロマンサー様の所へと突っ込んで、巣を狙う一匹の蛇を弾き飛ばした。




