旅立ち267
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それは少しだけ話が遡る。
遠目からでも、あの大きな大きな化け物が、地上にいるオーク達を襲おうとしているのが見えて、
「姫!!お逃げ下さい!!」
「ここから離れるんです!!」
後方支援のエルフ達も、何度も何度も響き渡る化け物の不気味な笑い声だけで、全員があれが危険な存在だと認識し、リーフに逃げるように促していた。
あれが絶望を具現化させたモノで、死を蔓延らせる化け物。
こうなっては指揮官とかどうとか言ってられない、命を掛けてフレン様の御息女であるリーフ様を御守りしなければならない。
「「ふぅぅ…………」」
エルフ達はリーフに逃げるように促した後は、すぐ様にマナを吸い上げて、前衛のオーク達を助けるためのサンダーボールを作り出そうとするが、
『ひょるぅんルぅるぅんㇽㇽ』
「うっ……」
化け物の気味の悪い笑い声に、息が詰まる。
まだ離れた所にいて、向こうにいるオーク達に向けて気味悪い笑い声は発しているのに、まるで、自分達にも向けて「こいつらを喰らったら、次はお前達の番だと」言っているようで、息が吸えない。
足がすくむ……仲間の…同じ街の家族であるオーク達を救わないといけないのに、あれが決して手を出してはいけない祟りが神のように思えて、意気消沈してしまう。
誰か一人でもサンダーボールを撃ち込めば、他の者も続く事が出来たかもしれないが、その一発目のサンダーボールを躊躇して出せない。
触れる事すらおこがましい、身の程の違いに成す術なく立ち尽くしている中で、
(アフレクションネクロマンサー様……)
リーフだけは、その先にいる化け物では無く、アフレクションネクロマンサー様を見る。
アフレクションネクロマンサー様は、苦しんでいる。
どうやって戦えば良いのか分からず、どうやってみんなを助ければ良いのか分からずに、一人で全てを背負い込んで、自分の持てるだけの力で戦っている。
「やっぱり…お母さんと一緒だ……」
危なくなったら、みんなを見捨てでも逃げる……そう言ってても、見捨てずに逃げない。




