旅立ち266
これが捕食者。
礼人という親鳥を捕食するのは難しくても、雛鳥を捕食するのは容易い。
一人しか守護する者がいないのに、二つの巣があって、大量の雛鳥がいれば餌場でしかない。
「あぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁ!!!!!!」
礼人は、仲間を守れない事に悲鳴を上げながら、無造作に翡翠の剣を振るって衝撃波を出来うる限り作り出して、今度は指先にぶつけて、
『パパパァッパァッパアン!!!!!!』
何とか軌道を逸らせようとしたが、クネクネと動く指全てに当てる事は出来ず、
「くそぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「やめろぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇ!!!!」
衝撃波を掻い潜った指が、雛鳥を攫う。
「あぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁ!!!!!!」
目の前で連れされていく仲間、答えの出ない地獄の光景に礼人は発狂しながら戦い続けるが、
『ひゅぅるぅるㇽるるぅるㇽる』
出来損ないの人魚は、その光景がさぞかし気持ち良いのか、愉悦に浸って楽しそうに笑う。
「あぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁ!!!!!!」
『ひゅぅるぅるㇽるるぅるㇽる』
雛鳥を守れない親鳥が発狂して、羽をばたつかせて蛇を追い払おうとするが、蛇はその発狂する親鳥の姿すら食事のスパイスとして、命をむさぼり食べていく。
こうなってしまっては、巣の中の雛鳥を食べ切るまでは蛇の捕食は止まらない。
最後に残った巣を見て、親鳥は死んだように途方に暮れる……それが自然界の掟。
身を守る術を持たない弱者は……
「しっかりしてぇぇ!!アフレクションネクロマンサーー------!!!!」
「……っ!!」
気を狂わせながらも、翡翠の剣を振るっていた礼人に、自分を引き戻そうと叫ぶ女性の声が聞こえる。
完全に見開いていた目が、痙攣しながらも自分の事を呼んだ方を向くと、
「戦えないなら逃げて下さい!!戦えるなら私達に力を貸して下さい!!」
そこには、アソリティの剣を構えたリーフが仁王立ちして側にいる。




