旅立ち264
自分達は護られている。
それが分かると、さっきまでの息苦しさや歪んでいた視界が戻り、
「走って!!」
「は…はい!!」
水の中に落とされたかのように、自由の利かなかった体が走り出す。
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出来損ないの人魚の手に、追い付かれそうになったオーク達を救った礼人は、
(どうすれば良いんだ!?)
身を翻して出来損ないの人魚を睨み付けると、向こうは笑いながら目を細めて、こっちを見ている。
まさに追い詰められている者と、追い詰めている者の対比。
こっちは被害者を出さないようにするのに手一杯なのに、向こうは時間が経つうちに、獲物を捕らえられると悠然とし、
「固まれ!!固まれ!!」
「油断するな!!攫われるぞ!!」
魂が籠った武具を渡した彼等は、互いに声を掛け合って抵抗していたが……
「ぐわぁぁぁぁ!!!!」
「仲間を離せぇ!!!!」
抵抗はしていたが、現実は残酷で彼等の抵抗は、出来損ないの人魚にとっては、ただ震えてピィピィと泣いてる雛鳥にしか過ぎなかった。
出来損ないの人魚は親指から薬指を蛇の舌先のようにチラチラさせてオーク達の気を逸らし、気が逸れている間に、小指だけが地面を這って、ヒラヒラした小指を一人のオークの足に巻き付けると、巣から引き離して捕食する。




