旅立ち261
「化け物……」
赤い蛇がしつこく、執拗に狙い続ける動きに、オーク達は固唾を飲んでいる。
肌に冷たい汗が流れて、分かってしまったのだ。
目の前の存在が、自分達に抵抗出来る存在では無いこと、親鳥に守られないと生き延びれない事を。
礼人は自分がいれば、おいそれとその赤い腕を伸ばして来ない事で、多少の考える時間を手にする事が出来ると、頭を回そうとするが、
「うっ…うわーーーーー!?」
「振り向くな!!逃げろ!!」
反撃する術を持たない、撤退する時に救援する部隊が悲鳴を上げた。
「くそっ!?」
それは自然の摂理。
親鳥が守る巣よりも、親鳥がいない、しかも反撃する手立ての無い巣を狙うのは自然の摂理。
出来損ないの人魚は狡猾であった。
最初に両の手を伸ばしたのは、親鳥である礼人を呼び込むため。
目の前にいる雛鳥を守らなければと飛んで来た所で、もう片方の手は無防備な雛鳥に向かって手を伸ばす。
「アフレクションネクロマンサー様!!」
「全員で合流します!!」
こうなってはバラバラに動く方が危険、全員で一丸となるしかないが、
「先に行って下さい!!」
「ダメだ!!」
一丸となってというのは、あくまでも礼人を中心にした一を、みんなで囲む丸であり、礼人がいなければ一丸にはなれない……礼人がいない巣は、間違いなく崩壊する……
「我々は覚悟が出来ています!!それに渡された武具がございます!!」
「悲鳴を上げている者を、お救い下さい!!」
「…すまない!!」
「悲鳴を上げている者を」その言葉が礼人を走らせた。




