旅立ち255
リュウグウノツカイもどきが敵に倒されたとしても、敵に甚大な被害が出せるし、リュウグウノツカイが生き残ったとしても、死の物狂いの攻撃で疲弊していて、後処理も簡単に出来る。
至れり尽くせりな殺戮兵器ということだ。
大地に降りたリュウグウノツカイが、大地でのたうち回る。
「アフレクションネクロマンサー様の矢が効いているのか!?」
遠目から見ればリュウグウノツカイは、苦しんでのたうち回っているように見えるが、
「違います…あの化け物に影響は一切与えていません……」
それは、残留した翡翠の矢に力に苦しんでいるのでは無い。
「皆さんは撤退して下さい!!ここは自分が抑えます!!」
「しかし!!」
「早く!!」
これ以上、喋っている暇は無かった。
リュウグウノツカイが大地で転げ回るのは、
『ジュリュジュリュジュリュジュリュ』
数百体の鉄騎兵を吸収した分の、体を変化させるための脱皮。
大地に巨体を擦り付けて、気味の悪い音を立てながら、薄い赤い膜を剥いていく。
(どこを攻める礼人!?)
礼人は目に霊力を集中させて、リュウグウノツカイを観察する。
闇雲に戦って勝てる相手なら、力任せに戦うが、目の前にいるのは怨霊のタンク、全てを始末する前に自分の方が参ってしまう。
(何かあるはずだ!?)
白い瞳に集めた霊力で、リュウグウノツカイの中身を見るが、おぞましい量の怨念が渦巻いているだけ。
殺戮を求める兵器に、弱点を求めるのは無謀な気がしてくると、地上の方にいるオーク達の方を向き、
(全ての魂に協力を求めるか……)
彼等の武具に宿らせている魂を、自分が吸収するしか方法が無いかと脳裏を過る。




