旅立ち250
(奴等は…そこまで……)
礼人の中から先程までの勝利の確信は消え、身も心も構え直して、翡翠の力を再び高める。
礼人が青ざめたのは、不気味な笑い声が怖くて震えたからではない。
この声は聞き覚えがある。
この独特な鳴き声で「何か」までは分からないが、
「妖怪を創り出せるのか……」
この独特な鳴き声が、妖怪の類だというのは分かる。
鉄騎兵の中身は怨霊を集めた兵器、中の濃さを強めればそれだけ強くなるが、それでは妖怪にはならない。
自分達の世界なら、大きな鯉に魂が捕食されてしまうことが条件になるが、
「ふっ…どこの世界でも、妖怪は同じような鳴き方をするんだな……」
さっきまで浮き足立って、有頂天になっていた頭が冷めて、霊能者として更なる敵と邂逅することに体が武者震いする。
霊能者としての、本職の顔を覗かせる。
前にも話したが妖怪と幽霊とでは、余程特殊な幽霊でも無い限りは、妖怪の方が始末が悪い。
幽霊を始末する時は、霊能者が三人位で立ち向かうのだが、妖怪と接敵する時は、霊能者が束になり、バックアップ用の部隊を編成して、周りを隔離して戦う事が基本戦術と言えるほどに、妖怪と幽霊とでは格が違う。




