旅立ち243
それは、そうあって欲しいという妄想ではない、現実の世界で起きている事。
散々自分達を苦しめ、仲間たちの命を奪った鉄騎兵が、無様に吹き飛ぶ様を見て、体中の血液が沸騰する。
沸騰した血液が、体中の肉を焼くかのように体中を駆け巡り、体の中という中から燃える熱さに耐え切れずに、
「潰うぅぅせぇぇえぇぇぇえぇぇ!!!!!!」
今までの思いの丈を乗せた咆哮が、オークの喉から噴火する。
魔獣であったはずのオーク達の牙を抜いて苦戦せしめた、痛みを知らぬ鉄騎兵。
どれだけ殴り蹴ろうと、ゾンビのように繰り返し繰り返し襲ってくる鉄騎兵に、オーク達はいつしかから、オバケに恐怖を覚える幼子の様に怯えながら戦い、戦士としての誇りが失われた。
戦士としての誇りを失ったオーク達は、鉄騎兵達が自分達の故郷を攻めて来るからと、暗い廊下を一人歩いてトイレに行かないといけない子供のように怯えながら立ち向かっていたが、
「お前ら等!!仲間の加護があれば、恐れるような存在じゃあぁなぁいんだよぉぉぉおぉおお!!!!」
英雄アフレクションネクロマンサー様に与えらし、仲間の魂が籠った武具によって誇りが蘇る。
仲間の加護によって蘇った誇りが脈打てば、もう躊躇することはない。
本来のオークは、拳の一振りでリザードマンに死を覚えさせ、拳の一つでリザードマンを沈めて来た魔獣。
獣の眼光が鉄騎兵を捉える。
『ヒュピン!!』
『ガゴガゴガゴン!!!!!!』
『ヒュヒュン!!』
『ガゴン!!ガゴン!!』
物語の中から現れし英雄と、暴力で敵を屈服させる魔獣の圧倒的な力に、バッファローの群れの様に迫って来た鉄騎兵は立ち行かなくって、さながらヒヨコが群れるように後ろに下がろうとしたが、
『ヒューーーーーーーー』
空から降って来た雷球が、
『パァァァァァァァァン!!!!!!』
『グォォォォォォ!!!!!!』
上空で光って弾けると、後ろにいた鉄騎兵達に降り注いで動きを鈍らせる。
前も後ろも攻め立てられた鉄騎兵達はごった返してしまい、身動きが取れなくなってしまったのに、
「攻めきれぇぇぇぇ!!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
翡翠の羽を持つ少年の叫び声に、咆哮を上げた魔獣達が襲い掛かる。




