旅立ち237
________
ビレー達が見守る前線では、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
「連携を崩さないで!!この相手なら、我々は十分に勝てます!!」
嬉々として喜んでいるオークに応えるように、礼人の表情もハツラツとしていた。
鉄騎兵の影形が遠目からでも見えるようになった時、
「準備は出来ています!!」
「私が霊力の矢を撃ち込んだら、敵の状態を調べてから合図を出します!!」
目の動向が開き、筋肉が盛り上がって、オークの呼吸は荒くなっている。
(凄い…こないだの時は、彼等をしっかりと見る事が出来なかったから、分からなかったけど……)
昼前までは仲良く話し合う人であったオークが、この戦う寸前には、戦いをする為だけに産まれた魔獣に成り代わっている。
何で、自分達の世界でオークを恐れたのか理解出来る。
戦うことしか考えていない興奮状態。
まるで、レーシングカーがけたたましくエンジンを鳴らし、スタートの合図を早く出せと要求するかのように、大きい巨体が興奮する肉体に素直に従い、魔獣の本能に合わさって体を前のめりにして震わせている。
事前に話し合いをしていなければ、彼等は一目散に鉄騎兵へと接敵し、殴り合いを始めていると思わせる程に興奮している。
礼人の突撃の指示を今か今かと待ちわびる姿に、魔獣が自分の味方である事を感謝しつつも、礼人は体の中の霊力とマナ…そして、
(本当にありがとう……)
(ううん…お兄ちゃんともう一度、一緒に戦えて…凄く嬉しいよ)
唯一、体の中に残した子供の魂と融合すると、背中から翡翠の蝶の羽が生え、羽から翡翠の色をしたオーラが湧き水のように溢れ出ると、
「これより、鉄騎兵に一射を浴びせます!!」
礼人は最大の力で矢を放つ。




