旅立ち234
それは強制した事ではない、魂自らが、
(お兄ちゃん、僕達を使って!!)
その生命力を使って欲しいと、願い出てくれたのだ。
最初は、魂が無に還る事を嫌がった。
魂達が成仏出来ずに消滅するかもしれない事を分かってて、この世界に送り返したのだから、今度は最期まで守り抜きたいと心の底から思っていたのだが、
(拠点の中で、鉄騎兵と向き合ったから分かるんだ。僕達はあの鉄騎兵より少し強い位の力しか無い事を……みんなでお兄ちゃんと完全に融合しても、役に立たないって……)
(だからって……)
(僕達がずっと身を寄せ合って、遺り続けたのはお兄ちゃんに助けて貰いたいからじゃなくて、助けたかったから…それに……気付いてるんでしょ?)
(……)
(穢れに触れ過ぎた僕達が、この世界にいられる時間は、もう少ないって事を……)
……初めて体の中で子供と融合した時と違って、複数の魂が体の中に入り込んだのに、体に異変が起きなかった事に違和感を感じてはいた。
数十人の魂達が体の中に憑依すれば、それだけでも体に負担が掛かるのは間違い無いのに……
(お兄ちゃんが僕達の力を使わないで、体の中にずっといさせてくれたのは、僕達が消えないようにしてくれていたんでしょ?)
どうやら、全てを見破られていたようだった。
(ありがとう……)
籠手に宿らせた魂達に感謝をして、鉄騎達を迎え撃つ為に気持ちを高ぶらせていく。




