旅立ち231
「私は…自分の世界にいた時は見習いで。初めての戦場では、ただ自分の命を守る事だけに専念しろと言われて……何も出来ない私には言われた通りに身を小さくして怯える事しか出来ませんでした」
「それでも…あなたはアフレクションネクロマンサー様だったんでしょ……私とは違います」
それは違う。
「リーフさん……あなたは、私を神か英雄と勘違いされていますが、初めての戦場で私は無力で、鉄騎兵に、抵抗する事も出来ずにじいちゃんと大切な人を殺されました……二人が最期に、自分に力を託してくれて、アフレクションネクロマンサーになれました…けど……」
「けど……?」
「二人が託してくれた力で、鉄騎兵を一度は退けましたが、鉄騎兵は最後に化け物と化して、アフレクションネクロマンサーになった自分を、後一歩で殺せる所まで追い込みました」
それが真実、あの雪山の中で力を得たにも関わらず、心折られて死ぬ一歩まで追い詰められて……けれど、
「絶望と死の淵まで追い込まれて……足を踏み外して奈落の底へと落ちるはずだった自分が、今こうしてリーフさんと話を出来る理由……分かりますか?」
「…………」
リーフは横に首を振る。
アフレクションネクロマンサー様ですら死にかけた状況……それと今の自分の状況を照らし合わせろと言われても、立場も力も違い過ぎて……
「みんなと力を合わせて生き延びたんです」
「みんなと……」
礼人が生き残れたのは、じいちゃんとアニーさんから力を授かったのもそうだが、それともう一つの理由は、最後の瞬間までみんなで死に抗った事。




