旅立ち230
それもそのはず。
リーフは軍隊長のフレンの娘であっても、何か特別な指導を受けている訳でも無く、人質として戦場に連れて行かれて、みんなに守られて生き残って来ただけ。
それなのに、いきなり部隊の指揮を執れと言われても、彼女が満足にその役目を果たせるかは懐疑的で、それを本人も分かっているから断りたいのだが、
「無茶なお願いをしているのは分かっています。けれど、生き残った人の実態を調査したら下士官と言っても、実際には指揮を執る為の訓練を積んだ人はいなかったんです」
礼人は、断ろうとするリーフを無理にでもやらせようとする。
「それは、私も一緒で……」
「いえ、あなたは、みんなに守られていると言っても、ビレー隊長の側で指揮を見ていて。その都度、その時の説明をされていたんですよね?」
「それは……」
ビレーから帝王学を習っていた訳では無い。
それは、片手間に説明を受けていただけの話で、その程度の経験とも言えないものを頼られても……
「あなたは…この状況でも、まだ守られていたいのですか?」
「えっ…」
リーフが渋るのは当たり前だ。
自分の指揮によって、人が死ぬ。
その重圧にいきなり耐えろと言われて、受けられるのは余程の自信家かバカか、本当の天才か。
「ヒドイ言い方をしてごめんなさい……でも、聞いて欲しいんです」
あの冬山での出来事、礼人だって最初はみんなに着いて行くのを拒否し、雪山を突き進む時だって守られていた。




