旅立ち208
こんなにも睨み合い、張り詰めた状況で割って入って「自分達は仲間」だと言って、簡単に矛を収めるはずも……
「あなたが、そう願うなら仕方無いですね」
無いかと思ったが、礼人はいとも簡単に矛である銀の羽を収めた。
静かではあるが少しでも機嫌を損ねれば、牙を向けて争うを姿勢を見せていたのにリーフの一言で、魔獣は魔法のハープの音色を聞かされたかのように、大人しくなったが、
「キサマ!!」
礼人が矛を収めたことを良い事に、周りのエルフ達は手を出そうとする。
あれだけの力を見せられながらも、相手が譲歩するタイプだと思って、相手の情の部分に付け込んで、大人しくなった魔獣を討ち取ろうと矛を向けた途端、
「勘違いしないで頂きたい!!」
「うぐっ!?」
礼人は自分の声に霊力を込めて言霊を強くし、エルフが上げた声よりも大きく、張りのある声を出すと彼等を一喝して制止させた。
「私は鉄騎兵と戦い、傷付いた所を彼女に助けて貰った!!だから彼女の言う事を聞いている!!そうでなければ私は誰にも縛られない!!」
自分が矛を収めた理由がリーフにある事にすることで、彼女の立場を守り、その上で何かをすれば自分は容赦無く暴れる事を宣言する。
「くっ…説明しろ!!」
「そ…それは……」
目の前の正体不明な男が触れればすぐにでも暴れ出すと理解すれば友好的ではあるが、自分達に服従し、牙を決して向けて来ないリーフに矛先を向けるのは当然の話。




