旅立ち206
運良くエルフの腕に霊力の矢が刺さったのなら、後は体裁を整えるだけ。
走って息を切らして肩を上下させて、怒りを表現できるかもしれないが、
「動かないでしょ?マナを使った魔法では無いですが……霊力で使った矢は幽体に直接ダメージを与えて、幽体に怪我をさせられるんです」
自分は正体不明な存在、ならばここは正体不明な存在に拍車を掛ける為にも、静かに冷静沈着を装って相手にプレッシャーを掛けようとしたが、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
リーフがすぐ側にいる。
「……ごめんなさい」
その「ごめんなさい」には、彼女が自分を追って来ていた事に気付けなかった事、そして、
「なるほど、無理も無い……こんな枝みたいな物で叩かれただけなら、オークが泣き叫ぶはずはないと思いましたが……」
礼人は、エルフが落とした鞭のようにしなっていた木の棒を拾い、
「マナと魔力を媒介する事の出来る物で叩いていたのですか……」
『バキンッ!!』
霊力とマナを結合させた力で、軽々と木の棒を破裂させる。
雷が、木に直撃した時の音を小さくしたような、けれどハッキリと耳に残る破裂音は、
「なんだ!?どうした!?」
籠に乗っていたエルフ達、全員を飛び出させて、
「お前はフレンの娘の!!」
礼人とリーフを取り囲ませた。




