旅立ち202
それは上官を護衛する為に密集しているというよりは、怪我人だろうと集めて肉壁を作らせ、無理矢理防壁にさせられているという様子であった。
「あの馬車に、お偉いさんがいるんですね」
「馬車……?あぁ、籠の事ですね。そうです、あの中に私達の指揮を執られている方がいるはずです」
馬車…を籠と言うのならば籠なのだろうが、重要人物を守る為とはいえ目立ってしょうがない。
分散する事無く、一か所に集まっては良い的に思えたが、敗走している緊急事態では、そんな事を言うのは酷だ。
「それじゃあ手筈通りに」
「はい」
礼人は、ビレーに促されると食料が詰められていたタルの中に隠れ、一人のオークがタルを抱き抱える。
ここまで来る道中に、礼人の身を包むような布は無かったが、
「身を隠せれば何でも良いですよね?」
空になったタルに入り込めばと良いのではと提案すると、その案が採用され、
「よろしくお願い致します」
「はい、お任せください」
タルの中に身を隠して彼等と合流することになった。
タルの中でオークに抱えられながら、覗き穴から敗走している部隊をマジマジと観察する。
礼人はこの世界の事をあまりにも知らな過ぎるので、少しでも情報を得たくて、タルに覗き穴をあけて貰った。




