旅立ち201
一方的な暴力を一瞬で治め、決して地位や権力に屈しない神様。
いや、神様じゃなくても良い……そう、神様じゃなくたって良い、我々には神では無いが、地位や権力に屈しない英雄……
「いい加減にしなさい」
「誰ぐわぁ!!」
神ではないあの方に助けを祈った時、オークに散々鞭を振るっていたエルフの腕に、一本の白銀に輝く矢が突き刺さる。
「動かないでしょ?マナを使った魔法では無いですが……」
愚かな者達の言葉を聞かないようにと耳を削ぎ落し、
「霊力で作った矢は幽体に直接ダメージを与えて、幽体に怪我をさせられるんです」
夏の日差しを一杯に浴びた美しい森の葉を模したかのような、美しい青葉の色をした衣を身に纏う、その方の名前は、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
偽りの神によって絶望に晒された者達の前に現れたのは、
「……ごめんなさい」
手を合わせ、頭を垂れて祈りを捧げるべき御方。
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「追い付いた……」
迂回しながら森を抜けた先、石がゴツゴツと転がって、草がポツポツと顔を出す寂しい大地。
そんな寂しい大地を、アリがエサを求めてパラパラと歩くかのように行進している者達がいる。
「本当に負けたんだ……」
隊列も何もない、動ける者が力が続く限り逃げ続ける、死から逃れる為の行進。
傍目から見ても分かる、敗北者の末路の中、
「……あそこに、お偉いさんがいるんですね」
とある一団だけが異彩を放っている。
パラパラと敗走している中心に、オークが引っ張ている幾つかの馬車が見え、そこを中心にエルフとオークが密集している。




