夢の中40
その理由は単純明快、個人の情だ。
初めて会った時の荒んだ雰囲気は過去の自分に通じるものがあった。
アニーは礼人と違って最初からマナを大量に、潤滑に魔力に変えられたお陰で天才として受け入れられて、将来を有望され……その分自由が無かった。
それ以外の生き方は愚者が歩む道、夢を見ることは悪夢を見る事だと……
誰からも理解されない闇が礼人を飲み込んだならば、理解という与えられた光で焼かれたのがアニーであった。
正反対な生き方をしたのに、苦しみは共感が出来た……だからアニーは礼人だけは連れて行こうとしていた。
もちろん他の者達も苦しみ辛い思いを抱えていたが、もう大人で、過去の出来事と自分で解決させていたせいで、共感することは無かった。
アニー自身、初めて礼人に会った時にはこんなにも入れ込むとは思っていなかった。
「二月さん良いですよね!!」
「もちろんじゃ…礼人はアニーと行くんじゃ……」
「じいちゃ……」
「早く!!」
もう切羽が詰まっている。
こちらは逃げる側で、あちらは追う側……逃げる時間が遅れれば遅れるほどに犠牲者が出る確率は増していく……
こうしてやり取りしている時間すら惜しく、
「ぐぅぅぅ……」
その惜しい時間を犠牲にしたツケは、すぐに帰って来る事になる。
鋼鉄の巨人は、この惜しむ時間で行われたやり取りで、すぐ側にいる老人と子供が仕留めるのに造作も無い事に気付いてしまう。
一人の若者が大きな声で叫び、それに対して身動きの出来ない老人と少年……そんなのは考えるまでも無い、逃げ遅れた者を呼んでいると容易に想像が付く。
「あっ……」
鋼鉄の巨人は今度は両手足をしっかりと雪の上に付けた時、礼人はこれから何が起きるのか想像が付いて声が漏れ、
「こっちを見なさい!!化け物!!」
同じようにこれから何が起きるか想像が付いたアニーも光の矢を作り出して、鋼鉄の巨人に撃ち込む……その寸前の時であった。
(帰って……)




