旅立ち194
「生者を求めるか!!」
結界に張り付いて伸ばしていく触手に、自分達を求めて手を伸ばす姿のように見えて、周りのみんなは驚きと怯えた表情を見せるが、そこは専門職の礼人。
礼人は赤い触手に怯える事無く、さらに結界を強めて、赤い触手を祓おうとしたが、
(わた…しの…こえ…き…こえる……)
「なにっ!?」
誰の意志かは分からないが、赤いモノに取り込まれてしまったのか、それとも生きる者を逃がすために、わざと取り込まれたのか分からないが、
(に…げろ…にげ…ろ…おわ…おわ…おわった…………)
赤いモノを通して、戦場が終わり、敗走してしまったことを伝えてくれる。
周りのみんなは、突如現れた赤い触手を礼人が祓う事を期待の眼差しで見つめるが、
「あの…ビレーさん」
この赤い触手は残された意志で、生きている者に逃げるように伝えてくれていると、そのままにビレーに教えると、
「くっ…!!」
ビレーはギョッとして目と顔のシワが開き、その後に信じたくないと目を強くつぶったが、
(……認めざるを得ないのか)
目をつぶってしまったからこそ、分かってしまう。
まぶたの裏に映るのは、
「度重なる戦争によって食料も物資も底に着こうとしている。ここで我々が生き残るには、敵を討ち滅ぼすしかない」
さんざん食料を無駄に消費し、物資も自分達の分だけは確保して、少ない物資だけでやりくりさせた本国の馬鹿共。




