夢の中３６
アニーの攻撃により難無く鋼鉄に巨人に近付いて一刺しを加えた仲間は、
『ごっ!!』
鈍い音を鳴らして空をあられもなく飛んでいく。
「なっ……」
それはアニーの想像していなかった事態であった。
確かに鋼鉄の巨人は光の矢を顔に撃ち込まれて悶絶し、間違い無く右足に刺さった光の矢によって冷たい雪の上に膝を付けている……いるのに、
『がっ!!』
鋼鉄の巨人の左足は後ろに来た不審者を蹴り上げる馬の如く、仲間を空に蹴り上げてみせたのだ。
空を飛ぶ仲間……それを見てアニーが絶句する。
頭にも右足にも光の矢を撃ち込まれて苦しんでいるのに、鋼鉄の巨人は何の苦も無く左足で霊能者を蹴り上げた。
これが偶然、偶々ならば良かった……しかし実際は、
「往生際の悪い!!」
「いけません!?」
仲間が吹き飛ばされたものの、まだ攻め時と判断した者が果敢にも挑むが、
『バッ!!』
鋼鉄の巨人は地面にうつ向いていた体を捻ると、そのままの勢いで裏拳をぶち当てる。
これはもう偶然ではない。
鋼鉄の巨人は苦しみ悶えながらも、自分に襲ってくる相手をしっかりと反撃している。
アニーは苦しんでいるはずの鋼鉄の巨人がなぜ、そうまで正確に狙えるのかと眉間にしわを寄せながら睨みつけていると、
「アニー…それは人型の人形じゃ……」
礼人の治療を受けながらも、二月は目に霊力を集中させ、
「悪霊の集合体で…一つの存在ではない……」
「……そういうことですか!!」
二月の助言でアニーは、この鋼鉄の巨人に対して一つ理解することになる。
鋼鉄の巨人の中はあくまでも怨霊の集合体であり、一つの生命体ではないということは、足を貫き頭を撃ち抜いて、胴体を砕いたとしてもあくまでもその部分の悪霊にダメージを与えただけであり、他は影響を受けない。
「ぐぅぅぅ……」
呻き声をあげ、右足がだらりと力が抜けていても鋼鉄の巨人にはその部分にいる怨霊が苦しんでいるだけであり、
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まるでゴリラが両手足を付いて走るかのように両手と左足を使って突っ込んでくる。
