旅立ち158
種族が違えど、彼等だって生きている。
生きている命を守るために戦って来た礼人ではあるが、
「あぁあぁぁあぁぁ!!あぁっああぁぁぁ!!」
生き延びる為に命を奪う事はしたことは無い。
命を奪うというのは霊能者として、闇に掬うモノから命を守るという行為、全てを噓にしてしまうのではないのかと考えてしまった。
それは殺さなければ殺されるという、こんな状況下で考えるべき事では無いのだが、一度守る側の人間から殺す側の人間になってしまった事を理解してしまうと、
『バチッ!!』
「がっ!?」
手の中で作っていた雷の蝶が弾けてしまった。
集中力を切らしてしまい、形を維持することが出来なくなっ雷の蝶は、自分を生み出した主の手の中で死を迎え、弾けた羽が手に突き刺さる。
手の内を通して腕の骨までしゃぶられたかのような感覚に襲われた時には、礼人の両の手は力無くだらんと、のれんのように垂れ下がる。
「くっ……!!」
雷の蝶を造ろうとしていた途中だったからこそ、手が垂れ下がるだけで済んだが、
「バカだ……!!アニーが見てたら怒られる事じゃないか!!」
腕が動かない状況になって初めて、さっきまでの自分が愚か者だったと思い知る。




