旅立ち157
雷の蝶をぶつけた瞬間には感覚が消えてしまうので、炎の中でリザードマンがどうなったかは分からないが、
「アフレクションネクロマンサー様の御加護のある我々に、勝とう等という考えが間違っているのだ!!」
『ゴギャ!!』
炎の中から聞こえて来た勝利を手にする者の言葉と、敗北者が奏でる骨が砕ける音が耳に響くと、
(決まったのか……)
次の死を呼ぶ雷の蝶を生み出す準備を始める。
異世界に来たばかりで、躊躇う事無く殺しの行為に加担してしまうのは生き延びる為、相手がこっちを殺そうとしてくるのなら、これは正当防衛。
相手が自分を殺そうとしているのに、こっちだけが話し合いで解決なんて……
「ああぁぁあっあぁああぁぁっぁぁぁああぁあぁ!!!!!!」
体が痺れて言葉を発する事の出来ない者が、最期の悲鳴を上げるのを聞いてしまうと、礼人の手が止まった。
考えてしまった……
妖怪や幽霊を、無慈悲にこの世から消し去ったりして来たが、それはあくまでも誰かを守る為であり、妖怪や幽霊となって人を襲うモノは完全なる悪。
完全に消し去らなければ、多くの人が不幸になるという絶対的な正義があったからこそ、何も迷わず無慈悲に無に還すことが出来たが、炎の中で断末魔を上げたリザードマンは完全なる悪なのであろうか?




