354/1400
旅立ち155
それならば動かずに、操る事だけに集中すれば良いという話に思えるかもしれないが、
「我々に手を出した報いを受けろ!!」
「エルフの奴隷は死ぬのが役目だろ!!」
目と鼻の先では殺し合いが起きていて、
「うっ…あうっ……」
目の前にいるエルフの彼女は、未だ痛みに悶えている。
ここで礼人が雷の蝶を操作するというのは、ここから動けず。
何かあったら誰にも助けて貰えず、自分で何とかしないといけないという事になってしまう。
だから、礼人は神に祈ったのだ、敵が自分の方に来ない事を……
一匹の雷の蝶は自分の上空に止め、もう一匹は止めた雷の蝶よりも高く羽ばたかせながら炎の方に向かわせる。
上空に雷の蝶を一匹止めたのは、敵に襲われるのに怯えて自分の身を守るために置いたのではなく、
(これは無理だ……)
無意識に手足のように動かす感覚ではなく、片手ずつにラジコンのコントローラーを持って同時に操縦するように、自分自身に二匹の雷の蝶で意識を三分割してバラバラに操作する感覚に参ってしまって、一匹の雷の蝶は上空に待機させざるを得なかった。




