旅立ち153
(一進一退という所か……)
視界を奪ったという言葉に偽りは無く、リザードマン達はこちらを正確に狙うことが出来ずに炎を自分の身に纏わりつかせることで、こちらとの形勢を保っている。
これが、我々にとっての一進であるのだが、それと同時に部下達も炎に巻き込まれる形で身を焼かれ、炎が揺らめく中で影を追って戦う。
それが、我々にとっての一退となっている。
攻めていると言えば攻めているし、苦戦を強いられていると言えば苦戦を強いられているが、
(アフレクションネクロマンサー様の次の手立てで話が変わる)
現状の状況で一進一退というのなら、最後の切り札を切ったリザードマン達より、最後の切り札を持っている我々の方が有利であり、
「全員堪えろ!!アフレクションネクロマンサー様が次の策を用意して下さっている!!堪えた先に勝利を掴むのは我々である!!」
炎に身を焼かれて士気が下がらないように部下達を鼓舞し、リザードマン達には自分達の方が優位だという事を知らしめて士気を下げにいく。
(……炎の中にいられると、さすがに詳しい位置まで見れない)
礼人は、さっきと違って相手の視覚を奪う光球ではなく、相手を痺れさせるための雷球を作り出して、その場で固まっていた。
全てのリザードマンを動けなくする必要は無い、何人かのリザードマンを動けなくすれば人数差でオークが片を付けてくれるだろう。
何をしたら良いのか予測は付いているのに、何を悩んで動きが固まっているのかというと、この雷球をどうやってリザードマンに当てるかということ。




