旅立ち151
そんな所に自分達と同じ敗走兵なのか、エルフのいないオークの部隊を見付け、奪える物を奪おうと考えたのだが……
(アフレクションネクロマンサーなんて都合の良い者が、ここにいるなんて……)
エルフとオークが信仰している伝説の存在、半ばおとぎ話の中の英雄みたいな扱いだったのに、実際に力を目の当りにしては、
(運の無い話だ……)
このままでは生きて帰れないと、一縷の希望を掛けた奇襲は、絶望の扉を叩く形になってしまう。
(生きるんだ…………)
目をやられたから仕方無いのだが、目をつぶると、死の恐怖から思考を止めて神に祈りたくなってしまう。
暗殺部隊という所に所属しているからといって、死の恐怖を克服したからいるのではない、誰よりも相手を殺すことに躊躇いをしない、それだけの話。
「出て来い!!隠れているのは分かっているんだ!!」
(自分達が優位に立っているからと、ふざけたことを……)
森の中の葉がガサガサとかき鳴らされ、木々がバキバキとへし折られる音を立てる。
オークが鳴らす音に紛れて音を鳴らさず、オークが荒げる息に紛れて息を潜め、視界が元に戻っていないかと目を細く開けるが、景色に黒い影が踊る。
(まだダメなのか……)
何とか視界を取り戻せれば逃げ出す事だって出来るのに、いつまで、こうしていなければならないのか分からない恐怖に段々とイラつきを覚え始めた所に、
『バザァ!!』
葉の付いた木ごとなぎ倒す音が、自分の真横で聞こえた瞬間、
『ボオォォォォォ!!!!』
炎を吐き出して、自分と側で音をなら鳴らした者を炎の海に巻き込む。




