旅立ち144
いくら英雄でも、大切なリーフを怪我させられてまで敬う相手では無い事を示し、ビレーは返事次第では目の前の男を殴り飛ばそうと拳を握り締める。
「…………」
そんな、怒りを露にするビレーの問いに、礼人は答える事が出来ない。
それはオークの拳の一撃を喰らうのを恐れているからではない、むしろ、その一撃で許されるというのなら喜んで喰らっていた。
礼人が答える事が出来ないのは、自分がまた、思い上がった行為をしてしまったからである。
自分以外のマナと霊力を結合させる事に成功したという事に、喜んでしまいそのまま彼女に大剣を渡してしまったが、その後の制御の事を考えれば、自分が柄を握って補助をして、彼女に大剣を振るって貰うべきであった。
所々で出る自分の甘さにショックを隠せずにいると、
「……わざとじゃないのは分かった」
ビレーは、アフレクションネクロマンサー様が顔面蒼白になって、口を震わせて言葉に出来ないのを見て、わざとでは無いと理解して、握り締めた拳をほどいてリーフの肩に手を回す。
「動けるかリーフ?」
「うぅ…ん……」
本当に皮膚が焼けた訳では無いが、じりじりと無数の針に刺されるような痛みに、唸るように苦悶の声を上げるリーフ。




