旅立ち142
それは自分を囲む炎より温かいのに、手が焼けるような痛みを感じない不思議な感覚。
万物を焼いて滅ぼす業火とは違う、毛布に包まれたかのような温かさ。
何とも柔らかい温かさ……リーフは手に感じる温かさにうっとりとしてしまうが、
「横に円を描いて!!」
「……はいっ!!」
アフレクションネクロマンサー様の声にハッとさせられ、自分の手の中にある剣に込められた力の意味を思い出して、言われた通りに体を振り回して剣を横に振るう。
礼人は、彼女の大剣に霊力を送った後、邪魔にならないようにと彼女の背中から飛び降りて、周りのオーク達と同じように地面に伏せ、彼女がお願いした通りに大剣を横に振るう所を見ると、
『バチバチバチバチバチバチ!!!!!!』
大剣から放出されたエネルギーが、電気の弾けるような音を鳴り響かせながら炎を掻き消す。
(これは凄いな……)
こうなって欲しいとは思っていたものの、実際に上手く言っている所を目の当りにすると、我ながら随分と恐ろしい事をしていると実感する。
今後、この大剣に霊力とマナを維持出来るようになれば、一般人でも使える武器が完成したことになる。
しかも、この大剣の威力は、
「グェッ!!」
「ギェ!!」
炎の中に隠れていたリザードマン達に一回だけの嗚咽を許した後、その場でうずくませる。




