夢の中34
こんな兵器を相手にするのも想定外だが、最近は強大な妖が出ることもなく。
雑務とまでとは言わないが、微弱な妖の対処や結界の補修等がメインの仕事であり、そのせいと言うのもなんだが、二月はその衰えた体でも難無く仕事をこなす事が出来ていた。
そんなに急を要する事態が続いていなかったのならで、早めに体が限界に達しそうなことを伝えくれれば良かったのだが、
(まぁ…孫が可愛いと言えばそれまでですかね……)
礼人の事があったからだろう。
それは別に礼人が周り馴染めないとか、周りに付いていけないとかではなく、ただただ自分の孫を自らの手で育てたかったに違いない。
孫可愛さに判断を誤ったとは言わない。
現に礼人はまだ未熟だが、同じ年齢の霊能者と比べれば抜きん出ているのは間違いない事実であり、そんな礼人が英才教育を受けるのは間違った判断でなく、
(私も私で甘かった……ってことですね)
その考えがアニーにもあったが故に、礼人に霊力に付いて教える二月を微笑ましく、まだまだやるもんだと思って見てしまっていた。
しかし現実は、礼人に霊力を教えるには十分かもしれないが、実戦に出るには体が悲鳴を上げ、本当なら教育係として一線を退いて他の誰かに隊長の座を譲らなければならなかったのだ。
今になってこんな話をするのは不毛であり、老兵と言えど二月がここにいるのは皆の精神的支えになるのも事実だが、こうなってしまっては二月には下がって貰ってアニーが前に出るしかない。
アニーは代理の隊長として皆に指揮を執ると宣言したものの、
(外は鋼鉄の鎧に包まれて、中の悪霊の液体は底が見えないと来ましたか……)
鋼鉄の巨人をどう攻めるか決めかねてしまう。
答えだけを考えれば鎧を無視して中の怨霊の始末を付ければ良いのだが、その中の怨霊が濃くて真正面から挑むのは得策とは言えない。
だからと言って、ここで尻尾を巻いて逃げる事も出来ない。
そんな中でアニーは鋼鉄の巨人に対しての判断を下さなければならい。




