旅立ち140
自分が体の中にマナを取り込んで体内に染み込むのを待つより、エルフである彼女のマナを借りた方が早く、粉末のマナより彼女のマナの方が質が良いだろう。
どっちにした方が良いのか、ここで悩もうとしたが、
「準備は良いな!?」
掛け声に合わせて、自分の事を背負っている彼女が前に姿勢を取ったことで、走り出そうとしているのに気付き、
「待って!!」
何か算段があるのなら、このまま行って貰って構わないのだが、それならば魂から「みんなが殺されちゃう!!」という訴えをしに来るとは思えない。
彼女の大剣を両手で掴んで剣を引き抜いて前に出し、
「剣にマナを!!」
彼女のマナを求める。
すぐにでも大剣にマナを込めて欲しい礼人は、催促の言葉を発しようと喉を震わせようとしたが、
「分かりました!!」
礼人のお願いに彼女は、なんら躊躇いを見せる事無く、剣を受け取ってマナを込めると大剣が光り出す。
「これでよろしいですか!!」
「そのまま持ってて!!」
マナを込められた大剣に自分の手を重ね、大剣の中に満たされているマナの量を確かめてから、大剣に刻まれている紋章にマナと霊力を混ぜたモノを少量流し込む。
なけなしの自分の生命を繋ぎ止めるマナではあるが、それは後で補填すれば良い。
多分だが、このまま霊力を大剣の中に込められているマナに融合させよとしても、ぶつかり合って弾けるだけ。
そこで、自分のマナを混ぜ込んで繋ぎにすることで、融合をさせよとしているのだが、
「……いける!!」
自分の霊力が、大剣の中のマナに混ざり込む感触を感じて声を上げた。




