旅立ち137
(ありがとう、目覚めさせてくれて)
礼人は、自分の体の中に入り込んでくれた魂達にお礼を言う。
これは今更の話になってしまうのだが、黒い海から帰った後、礼人がマナを飲んだのは何も喉が渇いていたからではない。
体の中にマナを蓄える器官が出来てから、礼人もマナが枯渇すれば死んでしまう体になってしまっていた。
それはエルフのように、普通に摂取出来無くて一週間そこいらで死ぬほどでは無いが、全力で力を使った後に、なんらケアをせずに気を失ってしまえば、さすがに一週間も放置されていたら死んでしまう。
麗騎兵となった魂達は最初、礼人と融合することでケアしようとしたが、あまりにも衰弱していた為に、この状況で融合すると礼人の体が魂の生命力に耐え切れずに心臓発作等を起こし、死ぬ危険性があると気付いて、口から少しずつ魂達の生命力を分け与えることでケアしていた。
気を失いながら、魂達にケアをされながら自分の意識の中で漂っていた礼人。
ぼやけた意識の中でも、時折降り注ぐ命の輝きはマナの代価には十分で、意識は混濁する事無く、もう一日、ゆっくり寝ていれば目を覚ますという所まで来ていたのだが、
(起きて、お兄ちゃん!!)
(……?)
(みんなが殺されちゃう!!)
(……!!)
魂からの助けを呼ぶ声に、ぼやけていた意識を無理矢理に整え直し、目を強くつぶって、
(行くぞ!!)
意識を目に集中させて開くと、そこは炎の海に包まれている。




