旅立ち122
いつもなら、殺すだけの敵にわざわざ自分の名前を名乗る行為等しないのだが、リーフの腕の中で眠るアフレクションネクロマンサーを見て、
(英雄様ね……)
おとぎ話として語られてきた英雄……理由はどうあれ、彼は死の運命から逃れて生き延びる事になった。
物語のように彼が救う者だというのなら、彼に名前を名乗るのも悪くない。
「私はリーフと言います」
「そう……覚えておくわ。それで、そちらのアフレクションネクロマンサー様のお名前は?」
「えっ……」
彼女の、レンスのした自己紹介が自分に対してしてくれたと思って、リーフは律儀に自分の名前を返すが、レンスにとってはリーフの名前など興味の対象ではない。
「その…えぇと……」
ここで、礼人ことアフレクションネクロマンサー様の名前を聞かれてリーフは狼狽してしまうが、それもそのはず。
リーフと礼人は、この場で初めて会って名前を名乗っていないのだから、そんな事を聞かれてもリーフが答えられる訳も無く。
「……それは秘密です!!答えないように言われています!!」
「そう……」
気迫で押し切ろうとするリーフに、レンスは何か変なものを感じたが、この話はしないと翡翠の少年をリーフを守るように前に体を出して話を遮って来たので、話を切り上げるしかなかった。
話が終わり、互いに有益な話も無ければ話すことも無くなったので、リーフは自分の腕の中で眠る礼人を背中に回し、
「姫、アフレクションネクロマンサー様は……」
「良いの、私がおぶって行くわ」
リーフに使用人みたいなマネをさせまいと一人のオークが、代わりに自分がおぶる事を提案するが、リーフはアフレクションネクロマンサー様を背中におぶってから、投げ捨てた大剣を拾って鞘に納める。




