夢の中32
そして、もう一つ考えられるのが人工的に作られたということ。
この平成という平和の時代に、前者の自然発生は正直考えにくい。
前者が考えにくいなら、後者の人工的に作られた方だろう。
誰が?何のために?どうして?
そんなことを一瞬思いもしたが、
『ごぉぉぉぉぉぉ!!』
鋼鉄の巨人に狙われている部下が危うい。
闘うことに悩みは無い。
そして、鋼鉄の巨人を狙う所も悩むことは無い……なぜならば、
「ほほっ……その鋼鉄の鎧の下は随分やわそうじゃのう?」
二月は鎧の隙間に刀を差し込む。
差し込まれた刀は何の抵抗も無く鋼鉄の巨人の隙間に入り込み、
「むっ…」
『うぅぅぅ……』
差し込んだ刀に苦悶に満ちた怨霊の液体がつたって来る。
その苦悶に満ちた霊の液体を触るのは危険と思う前には、刀を一度回して抉り傷口を広げてから一気に引き抜き、
「はよ離れるんじゃ!!」
鋼鉄の巨人にダメージを与えることで、振り下そうとしていた手を止めさせる。
(これなら何とかなるかのぉ!!)
対峙している相手が絶対的な存在ではなく、戦い方を見極めれば戦える相手だと、
「駄目だよじいちゃん!!」
何とかいける……そう思ったのがいけなかった。
『ブシャアァァ!!!!』
鋼鉄の巨人に開けた傷口が、まるで壊れた噴水のように苦悶に満ちた怨霊の液体噴出する。
「二月様!!」
「大丈夫じゃ!!」
二月は礼人の声が聞こえた瞬間、腕で顔と喉、腹を庇っていた。
傷を負えば最悪、致命傷になってしまう部位を守ったのだが、その結果としては両の手にヘドロが付いたかのように怨霊が、ぬるぬるとまとわりつく。
「ぐぅぅ………」
鋼鉄の鎧の隙間から刀を刺し込まれた巨人は、少しくぐもった声を漏らしたものの平然と、ゆっくりと二月の方に振り返りながら腕を上げていく。




