旅立ち116
「アフレクションネクロマンサー様……」
リーフは自分の体に身を預けて眠る礼人を抱き寄せると、眠っているにも関わらずに、全力で走り終わったかのように荒々しく呼吸をしている。
こんなにも荒々しく息をするのは、ここまで来るまでに、余程疲れる事が合ったのは想像に難くない。
それでも自分達を助けるために、必死になってくれていたのかと思うと、
「ありがとうございます……」
自分達を助けてくれた礼人を抱きしめながら感謝の言葉を小さく呟き、それから、鉄騎兵を連れている彼女の方を向く。
「……そんな目で見るな。約束は守る」
リーフも疲弊しているせいで弱々しくなってはいたが、それでも彼女を睨み付ける視線は鋭い。
ここで争う事は確実に死を招く行いである事は、自分でも重々承知しているのだが、それでも自分の手の中にいる人を、この手で守りたいという強い意志が目に現れてしまう。
そんな、リーフの鋭い視線を反抗的だと言って、ここで鉄騎兵をけしかけるつもりは今の彼女には無く、
「道を開けるんだ」
自ら入り口から離れると、鉄騎兵にも同じように距離を開けるように指示した所で、
「ぐっ…リーフ……」
「おじい様!!」
丁度良いタイミングで、ビレーも朦朧としていた意識を取り戻し、これでこの部屋から出て行ってくれれば良いという所まで来たのだが、
「姫ー---!!」
「ビレー隊長!!どちらにいらっしゃるのですか!?」
ここで、間が悪いというのか何というのか、食糧庫を襲いに行った他のオーク達が大声を上げながら、リーフ達を探しにこっちに近付いて来るのであった。




