旅立ち115
鉄騎兵の後退り方は、偽物が闊歩して幅を利かせていた所に、真の英雄が偽りの者を裁きに来たのを知って怯えすくみ、少しでも自分の罪をバレないように、罰から逃れようとしているようであった。
(離れなさい、この方はアフレクションネクロマンサー様……我々の英雄ですよ?)
「ぐっ…ぐぉぉ……」
すでに格の違いを見せ付けた翡翠の少年に、紛い物の鉄騎兵に抗う意思など無く、
「…分かった……分かったよ……その子は我々のご先祖様を救ったアフレクションネクロマンサー様だ……この時点で処刑するべき方では無い」
鉄騎兵を連れていた彼女もまた、礼人の事をアフレクションネクロマンサー様と認めると、鉄騎兵に対して戦闘行為を止めるように指示を出す。
彼女が処刑を取りやめると宣言したのと同時に、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
リーフは大剣を地面に投げ捨てて、地面に伏せている礼人を抱き寄せると、自分の体で支えにして地面に座らせてあげる。
「……ありがとう」
礼人は、目の前の鉄騎兵から敵意よりも恐れの念を感じ、例え彼女が戦えと命令してもすくみ、目の前の翡翠に輝く少年が自分達を守ってくれることを感じると、
「ふぅ……」
限界まで張り詰めていた心が、限界で悲鳴を上げていた心が、泣き叫んでいた子供が泣き疲れて眠ってしまうかのように、礼人は目をつむって眠ってしまうのであった。




