旅立ち113
礼人が行って来た事がどうなったのか、どうなってしまったのかを伝えに来たのだ。
魂が還ることが出来ずに腐る。
礼人は自分が助けた魂達が、腐ってどうなってしまったのかを聞こうとしても吐き気がして、精神的なショックから息を乱し、肩を激しく上下に動かして何とか空気を吸いこむので精一杯で、声を出すことが出来ない。
礼人に一度は救われた魂達は、結局は救われることの無い世界に送り返されただけ、自分を助けてくれたと思ったアフレクションネクロマンサー様に裏切られた魂達は……
(だから、会いに来たんだ……お兄ちゃんを守るためにみんなで!!)
子供の魂が「助けられたみんなで会いに来た」そう伝えた途端に、いくつもの翡翠の蝶が大広間に中に広がって入って来るのであった。
「これ…は……」
自分がして来た偽善とも言えない行為。
困った人達を助けたフリをして、奴隷船に詰め込んだかのような罪悪感に心が折れかけたが、絶望に包まれた部屋に、希望を纏った翡翠の蝶達が羽ばたき舞うと、礼人の心は辛うじて繋がる。
まるで、爽やかな夏風に吹かれて、木々から木漏れ日が差しこむように美しく……闇を照らし出す希望の光が礼人の心を許す。
(アフレクションネクロマンサー様!!)
(もう一度、御会いしたかったです!!)
宙を舞う希望の光それぞれが、礼人の心に語り掛け、
(私達は、この世界に戻れても、世界は穢れ過ぎて還る事が出来ませんでした……)
(最初はどうしたら良いのか分からなくて、腐るしか無いのかと思っていました)
1つ1つの翡翠の蝶は、礼人に語り終えた者から互いに融合して溶け合っていく。




